2009/07/30

オツベルと象

オツベルと象 (宮沢賢治のおはなし (10))オツベルと象 (宮沢賢治のおはなし (10))
(2005/03)
宮沢 賢治

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●この牛飼いの語りは、75調が多いから、牧歌的。童話って、こんなものだった?〈そしてじっさい・オツベルは〉とか、雑巾ほどある・オムレツの・ほくほくしたのを・たべるのだ〉あたりのこと。
●オムレツの形容に、雑巾はないんじゃない。オムレツだけじゃない。オツベルは白い象とは対照的に、きれいに描かれていない。〈うすくらい仕事場〉でパイプをふかして、言葉遣いも乱暴だ。
●でも、章のはじまり〈オツベルときたら大したもんだ〉のとおり! オツベルはとても魅力的だった。命懸けで象を働かせたところはもちろん。第五土曜日に語られる〈ところがオツベルはやっぱりえらい。眼をぱっちりとあいたときは、もう何もかもわかっていた。〉というのだから。オツベルの言葉もいい。
「そうか。それではそうしよう。そういうことにしようじゃないか。」
って言って顔をくしゃくしゃにするところは、「注文多い料理店」の兵士たちが、最後に顔がくしゃくしゃになってしまう〈くしゃくしゃ〉を思い出してぞっとするけれど、それを考えなければ、かわいいと思う。(OUの連続があるのもいい。)
それに比べると象は、白いってイメージだけで、ピンとこなかった。

大学時代の金曜日、午後六時から八時は宮澤賢治のゼミで、毎週違作品を一つずつ読んだ。
読んでいると、夕方から夜になっていって、その時の濃い青い空と、風の音と、揺れる中庭の黒い木のシルエットこそ、宮澤賢治の童話の世界だった。お話を面白いと感じることはなかった。発表者が読む一文一文が好きだった。オノマトペが好きでない。でも、賢治の〈のんのんのんのんのん〉〈パチパチ〉はきらいじゃないし、音読をきくのがよかったんです。

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